「価値」と「価格」の混同
経済では「価値(value)」という言葉がよく出てきます。
またそれと同じくらい「価格(price)」という言葉もよく使います。
翻訳の歴史などもあるとは思いますが、かなり混同されている気がします。
「金銭にならない価値」というものは存在しますが、
「金銭にならない価格」というものは存在しません。
昔のクレジットカードのCMで流れていた、「priceless」という例がわかりやすいと思います。
M&Aにおける企業価値や、転職における人材価値(年収)といったものを考えるとき、必ず値段をつけます。
「企業価値」や「人材価値」と言った言葉がよく使われますが、
実際に考えているものは価値ではなく価格です。
また、「価値観」という言葉はあるが、「価格感」という言葉は辞書にはありません
(価格が妥当なラインかどうか、という意味で口語的には使いますが・・・)。
価値観は人それぞれ異なっています。
その多様な価値観を持つ人が構成する社会の中で、
商品の交換などの経済活動をするために、価格というものが使われるのです。
このとき財を交換する両者で「価格」は同じでなければなりませんが、
両者は異なる価値観を持っているのですから、「価値」は異なります。
そもそもミクロ経済的に考えると、両者とも効用が増加すると判断したときに財の交換を行います。
なので、両者の効用関数(価値観)は当然異なるものになります。
このように「価値」と「価格」ははっきり違うものなのですが、よく混同されています。
ここから一気に飛躍するのですが、
この「価格」と「価値」を混同していると、
ある2つの商品の価格が同じ時、価値までも同じになったと勘違いしてしまうのではないだろうか、と思います。
金融業に勤めていると、周囲の人が何かにつけて
「これは〇〇円だから得だ/損だ」と言っているのをよく聞きますが、
損得勘定が金銭でしか比較できないようになるのは、ちょっと精神的に貧しい気がします。
また、価値と価格を混同していますと、他人は自分とは違う価値観を持っていることを
知っていても、理解できない気がします。
社会は多様な価値観で構成されていることを認められるようになりたいですね。