仮想でない通貨はあるのでしょうか? 通貨というのはすべて仮想です
「仮想通貨」とよばれるものに最近投資しています。
仮想通貨には肯定派も否定派もおり、また論点も色々ありますが、
「私は実体のないものは信じない」という言葉をよく言われます。
今回は「仮想でない通貨ってなんだろう?」を考えたいと思います。
今までの歴史として、通貨や貨幣は以下のように発達してきました。
- 物々交換。貨幣のない世界。
- 貝殻。おそらく最古の通貨。
- 貴金属。主に金属などの工業的価値に由来する、とされるもの。
- 兌換紙幣。貴金属との交換を保証された紙幣。金本位制。
- 不換紙幣。金や銀との交換が保証されない紙幣。現在の法定通貨。
- 暗号通貨。
さて、上記のうち、「仮想でない」通貨はどれでしょう?
多分、ほとんどの経済学者は2〜5と答えるでしょう。
「仮想通貨」との対比の文脈であれば正しいけれど、本当に2〜5は「仮想でない」のでしょうか?
まず5の不換紙幣。
日本円を始め、ほとんどの国の法定通貨はこれです。
現在の法定通貨は中央銀行への信用が基礎になっています。
さて、ということは「信用は仮想か否か?」が不換紙幣が仮想通貨か否かを決めることになります。
信用は実体を持ったモノである、という人はいないでしょう。
教科書でも共同幻想と言われることもあります。
みんなが「この紙幣には1万円の価値がある」と信じているから1万円札は1万円の価値を持ちます。
したがって不換紙幣もある意味、仮想の存在と言えます。
次に4と3。
4の兌換通貨は3の貴金属の価値を基礎としていますので、
3の貴金属は仮想通貨かどうかを考えます。
「金は本質的に価値を持つ」として、仮想の存在として扱う人は少数派だと思います。
議論の前提にしてしまっている(悪く言うと思考停止)人もいるかもしれません。
確かに金は、
・劣化しにくい(錆びたり酸に溶けたりしない)
・加工しやすい(延性・展性に富む)
・見た目が良い
という通貨として扱うために適した性質はあります。
が、それだけで「通貨として価値を持つ」でしょうか?
反例として、スペイン帝国がインカ帝国から略奪したプラチナを捨ててしまった事例があります。
プラチナも金と同様に、通貨として適した性質を持つ金属ですが、
たまたま地中海やヨーロッパ世界にほとんど産出しませんでした。
要するに当時のスペイン人は「プラチナに通貨としての価値がある」という認識がなかったから捨てたと言えます。
反対に、金に価値があるのは「金に価値がある」という認識があるから、ということになります。
ということは、本質的には「金に価値がある」のではなく、
自己言及的になりますが、「『金に価値がある』という認識」が価値を生んでいる、と考えられます。
さて、だいぶ答えに近づいてきた気がします
2の貝殻はどうでしょうか。
不思議なことに、「金に本質的な価値がある」という人も、
「貝殻に本質的に価値がある」という人は少ないと思います。
たしかに金に比べると劣化しやすいのですが、
貝殻も金属以前は通貨として使われてきました。
金に本質的な価値があって、貝殻には本質的な価値がない、とするのは一貫性に欠く気がします。
貝殻も金の議論と同じで、当時使っていた人たちは
「この貝殻には価値がある」と思っていたから貨幣として流通できた、ということができます。
以上をまとめると、
「『貨幣として便利な性質を持ったものに価値がある』という認識」が通貨の基礎になっています。
貝殻も貴金属も不換紙幣もすべてこれに当てはまります。
もちろん、仮想通貨も、ブロックチェーンが改ざんされにくく、
二重支払いや複製をされにくいといった性質を持っていることから、
通貨としても使える、ということです。
ということは、結論として、「すべての通貨は仮想である」と言えます。
余談になりますが、これをもっと突き詰めて考えると、
人間が認識するものはすべて仮想のもの、
実体のないものであることがわかります。
これは色即是空などの仏教的なものの見方につながると思います。